【書評】【読書レビュー】通訳日記ザックジャパン1397日の記録

サッカー・ザックジャパンの通訳を務めた矢野大輔氏の日記を書籍化。
氏が、ミーティングの内容や選手との会話、そのときに感じた思いを短く記録したものをまとめたもの。
サッカーの書籍としていち通訳が日記の記録を書籍化するのは非常に珍しいと思う。
代表サッカーというものの裏側がどのように動いているかを知りたいというのもあり、11月に上梓されてから直ぐに購入していた。

通訳日記 ザックジャパン1397日の記録 (Sports Graphic Number PLUS)
矢野大輔
文藝春秋 (2014-11-27)
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この本を見て改めて分かったが、ザックという監督は代表監督には明らかに向いていなかった。
ディティールという言葉が好きで、一度決めたコンセプトを頑なに推し進めようとする。
丁寧で細やかな表現の持ち主だが、独特の言葉使いで、何を言いたいのか分からずコンセプトも不明瞭。言葉だけが先走っている。
だから説明と理解に時間がかかる。
このため国際Aマッチデーだけぱっと集まって試合をする代表のスタイルに中々合わず、自分の考えが浸透するのに時間がかかる。
最初からある程度の任期があるリーグ戦の監督なら悪くないと思うが、代表には明らかに向いていない。

モチベーターとしては選手を観察し心理をケアするなど卓越した部分があったと思うが、選考にセンスがなく、選手交代で戦況を打開したことは筆者の印象では一度しかなかった。

矢野氏はザックに心酔しており、ザックへの批判的な視点はなく、またこの本ではそこまで戦術に踏み込まず勝った負けた程度にしか記載はないが、頑固という言葉がこれほど合う人物もないと思う。
頑迷だからこそ最初の方針を曲げず、局面に対応した選考や交代が出来ず失敗していたのだろう。
特にザッケローニの失策だったと思うのは以下の点だ。

  • 本来DFでない今野をセンターバックに固定してまで超攻撃的なサッカーをやろうとしたこと
  • DFラインを異様な高さにまで設定してでも前線との間が30mに収まるコンパクトなサッカーをやろうとしたこと
  • DFラインの高さに合わない鈍足DFをセンターバックに起用したこと
  • ラインの高さ、4231のセンターバック2枚に加えて、攻撃的ボランチを配し、守備的に非常に不安定な状態を最後まで放置したこと
    (結果的に山口蛍が当たりである程度ケアした形にはなったが、長谷部が本調子なら山口も最後まで控えだった可能性もある。)(唯一のリスクマネジメントは、長友が上がって2DFになった後、内田が残って3DFを維持することだった。)
  • ポジションを放棄しがちな香川をサイドMFに配し同じく前線に上がることの多い長友と攻撃的パサー遠藤とのコンビになることで左サイドの守備が崩壊したこと

ザックジャパンは選手と戦術の硬直さから徐々に行き詰まりを見せ、終盤は、選手が戦術の縛りや義務が多く、やり辛いといったことや、左で上手くいかなかったら右の内田のスペースを使わせてくれといっても自分のコンセプトに逆らうのか、というやり取りがあり、下降線を辿りチームとして閉塞に向かっていったことが分かる。

ザッケローニの攻撃的サッカーを本大会で発揮するにはかなりいい組み合わせのポットに入らないといけないが、2014大会は順当なグループに当たり、互角(ギリシャ)、やや格上(コートジボワール)、かなり格上(コロンビア)の3チームとなり、順当にグループ敗退に終わってしまった。

日本人の国際試合の結果、現在の各国リーグの選手状況から鑑みても弱者の戦いにしか活路はなく、攻撃的サッカーをするにはよほどの運か無数のタレントが綺羅星の如く一時代に集結するしかないが、今は寧ろ谷間の時期であり、そのようなものは望めない。
結局、キャリア最初の代表監督ということで、不釣合いな高みを目指してしまい自滅したという印象だ。

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