【将棋】将棋ソフト不正問題に思う個人的な驚き

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観る将である。昔は新聞を読んでいて、将棋の観戦記の欄が面白くて切抜きをしてファイルしていたほどだった。土曜か日曜にあったNHKの将棋講座も大体見ていた。
今年も最強コンピュータ将棋ソフトへの挑戦者を決める叡王戦(第2期)を段位戦トーナメントからほとんど放送を見ている。

叡王戦は特に今年は羽生三冠が初出場するということでコンピュータ対人間に一定の結論が出るのではという部分で注目が集まっている。

羽生三冠については今更このブログで説明するまでもないだろう。
勿論、羽生三冠も予選から参加するので勝ち残らなければ電王戦でコンピュータと対戦出来ないのだが、当然のようにベスト4に勝ち残っている。
昨日の対局では千田五段が豊島七段に勝ち千田五段がベスト4の最初の勝ち抜けとなったが、棋士毎の個性や棋風を知っていれば知るほど将棋が面白い。

第2期叡王戦 準決勝 豊島将之七段 vs 千田翔太五段 – 2016/11/12 18:00開始 – ニコニコ生放送

追記:
これは11/13の時点で書いていたのだが、11/14の佐藤天彦名人と羽生三冠の対局で天彦名人が勝ち、決勝戦は天彦名人と千田五段の戦いになった。この結果、最強ソフトPONANZAと最強棋士羽生さんの対局は実現しなかった。

第2期叡王戦 準決勝 羽生善治九段 vs 佐藤天彦九段 – 2016/11/14 18:00開始 – ニコニコ生放送

将棋会の今年の大きなニュースの一つにソフト不正疑惑の問題がある。
渡辺明・現竜王が竜王戦タイトル戦の前に、対局者(挑戦者)の三浦弘行九段のスマホ閲覧による不正(カンニング)を指摘、将棋連盟が急遽、挑戦者を三浦九段から丸山九段に変更したことが話題になった。

三浦九段は不正を否定。その後、確かな物証もなく、将棋連盟から三浦九段への年内公式戦出場禁止のみが言い渡された。
この話には色々な見方があると思うが、個人的に思う所を書いていく。
今回、この記事の中でドラマ「鍵のかかった部屋」のトリックに触れているので、未見の方は注意されたい。

「鍵のかかった部屋」でのソフト不正トリック

一般的には
「棋士が将棋ソフトを使うほどソフトが強くなったのか」
「将棋棋士のモラルとしてソフトを使うカンニングなど有り得るのか」
といった驚きがあるのだろう。

ソフトを使った将棋の不正については、実はドラマ「鍵のかかった部屋」(フジテレビ・2012年)3話の「盤端の迷宮」でテーマになっている。
このドラマは個人的に好きだったので、不正問題が話題になって直ぐに思い出した。

密室パズルミステリー「鍵のかかった部屋」

ドラマの話ではスマホのソフトを使っているわけではなく、対局の差し手読みはノートPCにインストールされたソフトを使っている設定になっている。
このドラマは2012年のものだが、ドラマ内では既に将棋ソフトがかなり強く、控え室で記者たちが先読みでソフトを使い手を確認しているという描写がされている。

また、トリックについて触れるが、対局者Aには協力者Bがおり、Bは遠隔地でノートPCを開き将棋ソフトで同一局面を再現し、ソフトの指し手を確認する。BはAに差し手を連絡する。Aは携帯で連絡を受信し、着信数やバイブの振動で指し手を確認出来る。
Aは自分でスマホやソフトを見てはいないが、協力者を使うことで間接的にソフトを使ってカンニング不正をし、際どい局面を勝ち抜いている。

ドラマでのAは「プロ棋士」になることを目的としている。
「女流棋士」は「プロ棋士」とは別である。
プロ棋士は奨励会を4段以上で勝ち抜いた人がなれる狭き門だが、女性でプロ棋士となっている人は現在まで一人もいない。
ドラマでの犯人も女流棋士でなくプロ棋士を目指している。
女性がプロ棋士になるには天才的な才能が必要であり、そこを将棋ソフトと協力者による不正でなろうとしている。
Aはトリックを別の棋士に気付かれたため殺害に及ぶが、不正がばれるとプロ棋士になることはもとより、棋界から追放されるため、犯行の隠蔽が殺害への強い動機となっている。

同業者から内部告発されたことの驚き

ドラマでも、殺人事件に発展していることもあり、将棋界の人間関係についても取り沙たされており、棋士同士仲が悪い人も出てくる。

スマホ不正問題で個人的に最も驚いたのが、現竜王が同じ棋士、それも九段の超一流の実力を持つ棋士を連盟に訴えるという手段に出たことだ。
将棋界のプロ棋士というのは、順位戦やタイトル戦で勝負し勝ったり負けたりする関係だが、同時に各種イベントやニコニコ生放送などの解説などで協力する「同業者」でもある。
例えば下のリンクは将棋連盟のサイトにあるイベントの告知だが、クリスマスに棋士や女流棋士が集まり、棋士のトークショーや対局、演奏等も楽しめるイベントが開催されている。
クリスマスフェスタ2016|イベント|日本将棋連盟

こうしたイベントを同業者同士協力して開催するのも棋士という職業だ。
棋士は単に将棋で勝負するだけでなく、将棋というゲームそのものを広める役割を担っている。将棋の地位が社会で高まれば高まるほど棋士の社会的地位やタイトル戦の賞金も上がることになる。
将棋の社会的認知の向上は、棋士にとって勝負と同様に重要な使命になっている。

単に敵対する間柄なら相手を貶めるために色々な策謀や智慧を働かせるだろう。今回のように相手が不正をしたと触れ回ればそれだけ相手の棋士のイメージダウンにつながりタイトル戦の挑戦者から引きずり落としたり、公式戦の出場停止などダメージを与えることが出来る。
しかし、同業者でもあることから単純にこうした攻撃は出来ない関係だ。
そこに今回の不正問題の驚きがある。
将棋界というある種狭い世界の中で、同じ将棋連盟に属する棋士として、今後対局もあるだろうし、イベントやパーティーで顔を合わせることもあるだろうし、互いの対局を解説することもあるだろう。
そういう中で、相手を不正した疑いがあるとして糾弾して連盟に申し出るのは普通は出来ない。
棋士同士が不和や疑心になることがあっても、敢えて不正の疑いがあると申し出ること、そういう決断をした渡辺竜王の行動は驚きだった。

トップ棋士がわざわざソフト不正をするかどうか

不正したかどうかについては、通信記録やログを完全に解析しなければ分からないが、恐らく今後新たな事実が判明するということはないだろう。

ソフトを使った読み手というのは、ソフトの作り方によるのかもしれないが、基本的にはハードの能力に依存するので、ハードの能力が高ければ高いほど短時間に高速に多くの手を読める。逆にスマホを持ち込んで中座してソフトを起動したとしても、果たしてスマホにインストールした将棋アプリの読み手が竜王挑戦者の九段棋士を上回るものなのか、という疑問もある。

勿論、自宅のPCを遠隔で起動出来るようにしておき、スマホからリモートでログインしてPCの画面を操作するといった事も可能かもしれない。
が、そこまでソフトに依存するスタイルでタイトル戦に挑戦し続けられるものなのか。タイトル戦には竜王戦のように、一局が二日に渡るものもあれば、叡王戦のように持ち時間が1時間しかない早指しもある。
ソフト依存でそういった対局全てを乗り越えていけるのか、という部分で、トップ棋士がソフトを使う不正をわざわざするかどうかは、かなりの疑問がある。

しかしそれはトップ棋士であるなら当然分かっているので、渡辺竜王が敢えて不正の疑いの声を挙げた事について真実だからこそではないか、という面も出てくる。
今のところ、憶測の域を出ないのが残念だが、真相が明らかになるのを待ちたい。

追記:
12月26日の第三者調査委員会の発表を持って、三浦九段のソフト使用なしとの調査結果が発表されました。

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