【サッカー】2016年ハリル・ジャパン総括 1年前からの振り返り

日本代表サッカーのハリル・ジャパンだが、2016年11月15日に年内の公式戦の予定が全て終了した。昨年同じ時期に日本代表の記事を書いていた一年前の記事を見返してみると、かなり自分の予想と違っていた。
記録目的で2016年の日程が終了したこのタイミングで記事にしておく。


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A代表の2016年結果と最終予選

まず、A代表の2016年今年の結果と最終予選の順位を振り返っておく。

サッカーA代表2016年日程と試合結果

日程 試合 対戦相手 会場 得点 勝敗 得点者
3月24 アジア2次予選 アフガニスタン ホーム(埼玉) 5-0 勝利 岡崎、清武、OG、吉田、金崎
3月29 アジア2次予選 シリア ホーム(埼玉) 5-0 勝利 OG、香川(2)、本田、原口
6月3 キリンカップ ブルガリア ホーム(豊田) 7-2 勝利 岡崎、香川(2)、吉田(2)、宇佐美、浅野
6月7 キリンカップ ボスニア・HG ホーム(市立吹田) 1-2 勝利 清武
9月1 アジア最終予選 UAE ホーム(埼玉) 1-2 敗北 本田
9月6 アジア最終予選 タイ アウェイ(タイ) 2-0 勝利 原口、浅野
10月6 アジア最終予選 イラク ホーム(埼玉) 2-1 勝利 原口、山口
10月11 アジア最終予選 オーストラリア アウェイ(オーストラリア) 1-1  引分 原口
11月11 親善試合 オマーン ホーム(茨城) 4-0 勝利 大迫(2)、清武、小林祐
11月15 アジア最終予選 サウジアラビア ホーム(埼玉) 2-1 勝利 清武、原口

WCアジア最終予選結果(グループB)

順位 国名 勝点 勝利 引分 敗北 得点 失点 得失
1 サウジアラビア 10 3 1 1 9 5 4
2 日本 10 3 1 1 8 5 3
3 オーストラリア 9 2 3 0 8 5 3
4 UAE 9 3 0 2 7 6 1
5 イラク 3 1 0 4 6 8 -2
6 タイ 1 0 1 4 3 12 -9

ニュース等でも大きく扱われたように、UAE戦に負けたことで一気にグループ2位突破が危うくなり、3位でプレーオフに回る危険が高くなった。
このため、それまでは比較的少なかったハリルホジッチ解任論が現実味を帯びてきた。
しかし年内の試合をオーストラリアに引き分けで勝ち点1、その他は勝ち切ってグループ2位に踏み留まって年内を終えた。
オーストラリアがタイに引き分けたことも日本にとっては僥倖となった。

最終予選中の監督解任は、日本でも97年の加茂監督(→岡田武史がコーチから監督へ昇格)の例があるが、今回ロシアWCへの最終予選中でも、アメリカのクリンスマン監督解任が発表された。
クリンスマンはドイツWC大会で3位に入った実績があり代表監督として5年目を迎えていたが、北中米カリブ海最終予選に2連敗し更迭論が出た結果、解任されることになった。日本も勝ち点が後2点低ければこの時点で4位に回っていたため、決して人事ではなく楽観視出来る状況ではない。

サッカー米国代表クリンスマン監督解任 W杯最終予選で連敗スタート (デイリースポーツ) – Yahoo!ニュース

非常に薄氷だった日本代表だが、ここにきて監督の目指す力強い速いサッカーを実現しつつあるように感じる。
昨年から比べると現在大きく違ってきているのは、原口が左ウィングの主力に定着したこと、金崎が代表から締め出されたこと、ボランチの一角に山口蛍がほぼ当確となったこと、などだろうか。

また、これまで代表の主力・スタメンとしてほぼ固定されてきた本田、香川、岡崎、長友のいわゆるビッグ4のうち、本田や香川、岡崎であっても途中出場、或いはベンチのまま終わるといったことも珍しくなくなったことだ。

左ウィングに台頭した原口

まず原口だが、今年は大車輪の活躍で原口がいなければこの順位も非常に危うかったところだろう。

去年は今のようなインパクトを残しておらず、宇佐美と同列かそれより下の序列の印象だったように思う。
しかし、宇佐美がブンデスのアウクスブルクに渡り、試合に全く出られなくなり、調子を落としたのと対照的に、原口はヘルタでレギュラーを勝ち取って調子を上げ続け、代表でも臆することなく守備、対人の強さ、得点を取る所と持てる力を出し切り、ハリルホジッチ監督から当確のお墨付きを得るようになったと思う。

原口の台頭で問題なのは、左サイドの守備と攻撃が原口の個人能力に依存し、彼の存在が前提になってしまう危険だ。原口が出場出来ない時には左サイドに誰を当てても少なからず穴が開いてしまう。

今とはメンバーも戦術も違うが、ザック・ジャパンの時は左サイドが大きな穴になっていた。
左SHの香川が中央に入りがちで、左SBの長友は前傾で攻撃傾向が強く、左の守備的ボランチの遠藤保は対人で然程守備が強いタイプではないため、長友の上がった裏を衝かれると即座にピンチに繋がっていた。
また、長友、香川とも背がさほど高くないため、ハイボールの対処でも強さを発揮出来なかった。

更に言えば、左側CBには本職でない今野泰幸がスタメンで入ることが多く、今野はエリア内でのファールを厭わない部分があったため、左サイド全般に大きな傷口が開いていた。
「槙野に1年半で100の欠点を指摘した」というハリルホジッチであれば、今野が今4年若くても絶対に使うことはないだろう。
ブラジルWC本選でも失点シーンはほとんど左からやられている。
ブラジルWCコートジボワール戦の失点シーンについては以下の記事で書いている。
【サッカー】ボスニアHG戦を終えて 日本代表2016の問題点の考察と改善 – Digital Analyzer Zero

金崎の不用意

金崎はJリーグ所属の国内組だが、2016年当初は招集されており、アフガン戦で得点もしていた。が、それから徐々に印象を残せなくなってきた所で、所属チームの鹿島で交代時に石井監督に暴言を吐いたとされ、ハリルホジッチ監督から問題視されて以来、召集されることがなくなった。
召集メンバー発表会見でチームでの出来事を理由に「ああいう行動を取ると代表には入れません」と言うのは異例だ。
ここまで言った手前もあり、チームの規律や約束事を非常に重視するハリルホジッチ監督の性格から、恐らくもう呼ばれることはないのではないか。

スタメン固定化の弊害とメディアの論調

ビッグ4に代表されるスタメンの固定化の排除は、多くのメディアで歓迎すべき事として捉えられている。通常の感覚でいえば、戦術を複雑化し辛い代表チームにあっては、戦術で外せないメンバーというのは余り考え辛く、どちらかというとチームで調子のいいメンバーを優先して選ぶのが普通だ。

にも関わらず、歴代のジーコ・ジャパンやザック・ジャパンではメンバーを固定化する事で調子の悪いメンバーでも先発して試合に影響を及ぼす、相手に戦術を読まれ対策されやすくなる、スタメンを取れないメンバーのモチベーションが下がるといった弊害でワールドカップ本選でも惨敗を喫してきた。

代表監督からするとスカッドのメンバーを固定化する方が、連携や戦術的な約束事を毎回繰り替えさなくて済む利点があり、代表を運営し易いのだろうが、それでは勝ち切れないことは明白なので、ここにきてハリルホジッチ監督が代表暦が長い選手でもスタメンを取れない姿勢を明白に示したのはいい傾向だと思っている。

ただ、メディアの論調が直ぐに本田外し、香川外しだけを見て歓迎するかのように書かれているものもあるが、それは少し違うと思っている。
サウジ戦を見ても追加点により勝ち点3を得たが、2点目は長友から左サイドに回った本田へ、そして裏に抜けた長友へ本田がパスを出し、長友がサイドからクロスを出し、香川が触って少しコースを変えた所にゴール前に詰めた原口が流し込んで得点が入った。

このゴールだけ見ても、本田、長友、香川も含めて既存戦力と新戦力の代表・原口が合わさって点が取れたことは明白だ。これまで代表で連携を積み上げた既存戦力、更にチームで調子のいい原口や大迫、キャリアで最も油に乗った時期に来ている清武をブレンドしてスカッドを作り上げるべきだろう。

FW(1トップ)について

大迫に関しては、チームの調子の良さを見込まれて最終戦2試合でメンバーに招集されたが、自分も去年の記事では大迫を「落選の選手」として挙げていた。そのくらいインパクトがまだない時期だったと思う。
【サッカー】ハリル・ジャパン最終予選へ向けて 当確の選手・当落線上の選手は誰だ? – Digital Analyzer Zero
今は大迫は代表が本選でグループステージを突破出来るどうかを左右する、非常に重要な選手になってきていると思う。
体の使い方が上手く空中からのボールを足元に正確に止め自分の間合いに持ち込み、突破、或いはファールをもらえる。懐が深く体幹も強く当たり負けしない。
1トップであればファーストチョイスで、大迫は本選へも確定と言っていいだろう。

無論、大迫だけでなく、「大迫と競争させている」と監督に言われている武藤も怪我で活躍出来ていないが、武藤についても復調してこなければいけない。

岡崎については、大迫というよりも浅野との競争だと思うが、やはりビッグ4外しの対象となっている。
レスター優勝の翌年の2016年は、ムサやスリマニなど攻撃的な選手が多く入り岡崎はレギュラーから締め出されることが多くなり、またしても苦境となるシーズンになった。結果、チームで出られない本田と同じような立場になり、ハリルホジッチ監督からも徐々に出場機会を絞られてしまっているのが現状となっている。
が、岡崎は常にチームで何をすれば自分が輝けるのかを考えてチャンスをモノにしてきた選手でもある。岡崎は確かに大迫のような1トップに向いている選手とは言い難いが、必ず代表でも自分が必要とされる局面を考えているのは間違いない。

浅野については、サンフレッチェからアーセナルに移籍し直ぐにシュツットガルトにレンタルになった。浅野と岡崎の序列が入れ替わったと思ったのはアジア最終予選のタイ戦だった。が、この試合後も浅野はスタメンを確定出来ず、現状は攻撃的な選手で打開する時のオプションで、岡崎と競争となっている。それでも、数少ないリオ五輪組なので、このまま代表に定着してもらいたい。

2列目右と本田について

本田はチーム同様右サイドを任されたが度々中央に入り込み右サイドを空ける癖があった。ミランではそのような事は許されないが、代表暦が長い本田は得点を取っていることと、周囲のスタメン組と連携を話し合い確立する余裕があるので、そういったセルフィッシュなプレーも自分が効果的だと言えば行う事が出来る。

ザック・ジャパン時代はいわゆる「自分たちのサッカー」で自滅。ハリルホジッチ体制でもそういう危険はあったが、ハリルホジッチ監督は本田を使い続けている。

本田はサイドでもボールをもらって一旦左足に持ち替えないとアクションを行えないので、ワンテンポ遅れてしまう。身体的なスピードが速くないためウィングに不可欠な単独突破が難しい上、利き足側を絞られる守備という面でも対策されやすい。

このように数多くの問題点や弱点を抱えているが、一旦ボールを収めるとタメてからの決定的なスルーパスや得点に繋がる起点になる事が出来る。
また、得点力や勝負強さはハリルホジッチ体制でも随一であり、本大会で外せる選手ではない。

問題はミランでの出場機会が劇的に減っている事で、チームが若返りを図り、特に同じポジションで起用されているスソを外すことはミランにとってはまずないので、スソが怪我をするか本田自身がポジションを変えない限りミランでスタメンになる事はまず有り得ない。

結局本田にとっての選択肢はまだ代表が自分を必要としている間にチームを移籍する事しかない。そのためにも今冬のメルカート(市場)でスタメンを勝ち取れるチームに移籍することが本田にとっては非常に重要になる。もし、来夏だと移籍金が0となるため、移籍金が取れる冬の市場でミランが放出に動く可能性はあると見られている。

国内組の小林悠、海外組の久保裕は本田の代役として右サイドでテストされている。小林悠はそれほど若くないので、戦術的にも直ぐに適応し、守備に専念すれば本田よりも守備力は高いと思われるので、オプションとして本選にも選ばれるだろう。

久保はサウジ戦で真坂の先発だったが、守備に追われた事と召集暦が短い事で余り良さを出せなかった用に思う。が、久保もリオ五輪世代の一人であり、次世代を考えると今後も代表に召集してもらいたい。

ボランチについて

ボランチについては、2ボランチの長谷部を固定とするも、もう一角が定まらず、1年前から、柴崎、大島、柏木、原口、遠藤航、山口蛍、小林祐と多くの選手がテストされてきた。結局、現在は主に山口、ホームや格下限定で柏木(または他の選手のテスト)といった人選が組まれている。

柴崎は2015年6月16日のシンガポール戦にはスタメンだったが、9月のカンボジア戦・アフガン戦・10月のシリア戦ではベンチ、10月の親善試合イラン戦ではスタメン。11月のシンガポール戦から召集外となり以降は呼ばれていない。

大島はUAE戦で失点に絡んだことで以降呼ばれなくなり、柏木は上述のように限定的に使われている。

柴崎や柏木、大島を見ているとやはり外国人慣れしていないというか、プレーに余裕がない場面で海外組よりもプレーが遅くなったり、体を寄せ切れなかったり、一歩遅かったりという部分が目立つように感じた。
守備のやり方、体の寄せ方、攻撃から守備に転じた時のスピードは周りの選手、特に海外組よりも遅く見えてしまう。つまり、敵から見て狙われやすい、穴になりやすい選手といえるかもしれない。

小林祐はエールディヴィジのヘーレンフェーン所属だが、試合も見たことがないのでどんな選手なのか分からない部分が多く、代表でもチームとポジションが異なるのでまだ不透明な部分が多いが、対人慣れしていて、アグレッシブだが「代表で自分が目立とう」という部分も多く感じるため、精神面でも純粋に代表に貢献するという気持ちをもっと出していってもらいたい。しかし、まだ若いので、長谷部が代表引退後に一気にチームの主力になる可能性もあると思う。もしバックアップメンバーとしても、ロシアに連れて行けるなら連れて行ってもらいたい選手だ。

山口はブンデスからJ2セレッソに戻り、海外組から国内組になったが、厳しい試合やアウェイでも当たり負けせず、ボールを取り切る所とゴール前に俊敏に顔を出す所はハリルホジッチ好みであると思われ、2016年も継続して使われている。
恐らく本選のファーストチョイスも長谷部と山口のコンビでスタートし、カード、怪我などによって山口を変えるかどうか、という人選になると思われる。

サイドバックについて

サイドバックについては、酒井宏樹、酒井高徳のいわゆるダブル酒井だが、1年前は当落線上の選手としていたが、何れも代表に当確し、チームでもステップアップしている。酒井宏樹はハノーファー96の契約を満了してフランスの古豪マルセイユに移籍。酒井高徳はハンブルガーSV所属は変わらないが、この度チームキャプテンに就任した。

酒井両名については、試合でも猪突猛進のようなプレーが多く、内田のようなビルドアップ能力や長友のような驚異的な上下動を可能にするスタミナという武器はないものの、代表では彼らの代わりにスタメンを取る選手も出現せず、内田もようやく怪我から復帰するかどうかという状態なので、恐らく本選まで酒井両名がスタメンを失うことはほぼないだろう。
左は長友や槙野が選ばれる可能性はあるが、酒井高徳は両サイド出来ることから、チームを外れるという可能性はまずないだろう。

両名とも、実力に見合ったチームでレギュラーを勝ち取れる状態にあり、フィジカルも強く怪我も考え辛いため、本選まで計算が立つのは大きい。

その他

選手の話ではないが、日本サッカー協会(JFA)に人事異動があった。
一つは、JFA内部の人事関係で、ハリルホジッチ監督の交渉に当たり信頼を得てきた霜田正浩ナショナルディレクターが協会を退会した事だ。
ハリルホジッチ監督が就任後にJFA会長選があり、会長に田嶋幸三が選任した事で、西野朗が技術委員長に昇格。そのため霜田は技術委員兼NDへと事実上の降格となっていた。技術委員長と役割が被るような今の立場は良くないため、という趣旨のコメントを残して退会している。
ハリルホジッチ監督には就任当初から霜田氏と二人三脚で来た部分があるため、最終予選時期のここに来ての離脱は非常に頭の痛い所だろう。
ハリルホジッチ監督に退任を報告して叱られたが最終的に了承されたという談話だったが、監督に協会の人事に口を出す権限はない。

二つ目は、リオ五輪を率いた手倉森誠監督が日本代表コーチに再任しA代表コーチに入ることになった。
これは最終予選でチーム状態が悪くなった時にハリルホジッチ監督の解任に備えたものだという見方もある。
もしプレーオフが確実になると監督解任がまた現実路線を帯びてくる。そうなると急に代わりの監督を探しても上手くいかないから今のうちに体制内に入れておくということだ。
手倉森監督はリオ五輪出場にはチームを導いたが五輪ではグループステージで敗退。オーバーエイジの選出を含めて、結果を残したとは言い難い。
が、現状では、浅野や久保といったリオ五輪組からは、テグさんと慕う彼の存在がA代表にあることは心強いかもしれない。

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