【将棋】第2期叡王戦が12月4日から開始 貴族・天彦とソフト研究の第一人者千田五段Ponanzaと戦うのはどちらか 基礎知識を抑えておこう

第2期電王戦への挑戦者を決める第2期叡王戦が12月4日から始まる。

第2期 叡王戦 決勝三番勝負「権威 vs 変革」

挑戦者は佐藤天彦名人と千田翔太五段。勝ったほうが来年行われる第2期電王戦で最強と目される将棋ソフトPonanzaと戦う権利を得られる。
勝負は三番勝負となり初日は12月4日、9時30から沖縄県名護市で開催される。

第2期 叡王戦

今年は、将棋ソフトの不正利用が竜王戦前に指摘されるなど、ソフトと棋士の話題も多かったが、今年の第2期叡王戦では羽生三冠が参戦したということで、トップ棋士とソフトでは現在、どちらがどのくらい強いのかという結論が出るのではないかということで大きな注目を集めている。

今回は将棋の観る将の筆者から、将棋に余り興味がないという人に向け基礎知識として書いていく。

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佐藤天彦(さとうあまひこ)

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(画像掲載元:日本将棋連盟公式サイト)

佐藤天彦|棋士データベース|日本将棋連盟

段位:九段
戦績:名人1期、叡王他
戦型:横歩取り、受けが強い
愛称:貴族

佐藤天彦名人は今年羽生3冠から名人位を奪取して28歳で名人位に就いた。ここ10年以上ずっと羽生か森内どちらかという中で、若くして名人位を取ったので注目されている。
コンピュータ将棋に関しては解析などに使っており、「使う側」の棋士である。
キャラクター的にはクラシック音楽に造詣が深いといったことから「貴族」と呼ばれている。
渡辺竜王は少し年上だが、昔からインターネット将棋で対戦していて仲がいいようだ。
解説などを見ていても非常に分かりやすく丁寧で、かつ筋の発見も早く、解説で最も分かりやすい棋士だと思っている。

天彦名人の棋風は凄まじいまでの受け。第2期叡王戦戦準決勝の羽生三冠との戦いで、世間的にも最強棋士・羽生善治と最強ソフト・Ponanzaのどちらが強いかが決まるということで注目が高く、羽生三冠が順当に勝つのではと思った人も多いかも知れないが、結果は天彦名人が入玉という戦法で羽生三冠の陣地に入り、羽生三冠の攻めをはずすという形で勝った。

リアルタイムで筆者も見ていたが、鳥肌が立っていた。天衣無縫というか、将棋でこんな形で勝つのは初めて見たからだ。

入玉というのは、どちらかというと相手の攻めを紙一重でかわしつつ、時間を稼いだ間に相手の王を詰ませるという際どい勝ち方になると思っていたのだが、この局では佐藤側の駒が陣形を保ったまま、横から縦へと並びを変え、縦列体制で羽生側の陣地に入り込み、玉を守る陣形を維持して単なる入玉というのとは違っていた。

将棋では歩兵、桂馬や香車など「前にのみ」圧力をかけて攻める駒が多く、一旦自分の陣地に入り込まれるとそうした駒はことごとく威力を失いただの置物になってしまう。相手の陣地に入り、成駒になっても、相手は自分の陣地にいるので、そこからまた戻ってこないと戦力としては使えない。羽生三冠側の玉はまだ直ぐに王手がかかる危険な状態ではなかったが、粘っても徐々に寄られて真綿を締めるように圧迫されるのが目に見えており、投了となった。

第2期叡王戦は筆者もニコニコ生放送で大半の局を見ていたが、天彦名人が羽生三冠を制したこの戦いがベストバウトだと思っている。

第2期叡王戦 準決勝 羽生善治九段 vs 佐藤天彦九段 – 2016/11/14 18:00開始 – ニコニコ生放送

千田翔太(ちだしょうた)

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(画像掲載元:日本将棋連盟公式サイト)

千田翔太|棋士データベース|日本将棋連盟

段位:五段六段(16年の12月に六段に昇進)
戦績:将棋大賞新人賞他
戦型:ソフト研究に基づく力戦調が主体 角換わり腰掛け銀なども
愛称:チダショー、超電脳棋士

千田五段は将棋界でもコンピュータ将棋に関してはトップクラスに詳しく第2期電王トーナメントでも、二日目のMCと解説をし、MCのない日でも開発者のサポートしたり状況を聞いたりと精力的に動いていた。現在、そこまでして開発者に寄り添っている棋士は千田五段しかいない。
ソフトを研究に使わないトップ棋士、ソフトとの戦いに意味を見出ない棋士もいる中で、千田五段の立ち位置というのは将棋界の中でもかなり異端である。

第1回電王戦では兄弟子の山崎隆之八段(第1回叡王)のサポートチームに付いて解析を担当。
弱点の筋を発見していたが、山崎八段が弱点を付かず負けてしまった。控え室ではそれを見て千田五段が頭を抱えていたという話が伝わっている。
今回は兄弟子の敵討ちとして決勝というところまで来た。

しかし面白いのは、千田五段のモチベーションは、敵討ちよりも叡王になり電王戦への挑戦権を得ることで、最強将棋ソフトのPonanzaの貸し出しを受けることということだ。

貸し出しを受けるとPonanzaを自宅で使える。現在最新最強のソフトPonanzaを使える権利は叡王にしかないため、ほかの棋士と比べると圧倒的に有利になる。
しかも電王戦が終わっても特に貸し出し期間が終了するわけでなく、従来通りであれば開発者の厚意でずっと貸し出しされる模様だ。
ソフトを使える人が有利になり、使えない人は不利になるので不公平だ、という意見も一部の棋士からは挙がっている。この辺りはソフトと棋士を巡る棋士へのインタビュー「不屈の棋士」で触れられている。

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今の将棋の目的は将棋棋力の向上のためで、棋力向上のためにはソフトを使うと言い切っている千田五段にしてみれば、最強ソフトの無償貸し出し権利は喉から手が出るほど欲しいに違いない。天彦名人以上にモチベーションが高いのは間違いない。

千田五段の棋風は居飛車党(飛車を初期位置のまま戦うこと)の力戦調(定跡から外れた部分での戦い)だが、ソフトとの対戦や解析で培ったソフトのような打ち筋で、検討済みの局面については指し手が非常に早く研究に裏打ちされた緻密な打ち筋という印象がある。
キャラクターとしては線がとても細く、痩せている。話し方は慇懃で丁寧だが、コメントの内容は辛らつな部分もある。

あと今回面白いのは関西の棋士が二人とも決勝に勝ち残ったこと。
準決勝が天彦名人、羽生三冠、千田五段、豊島将之七段であり、4人中3人が関西出身棋士だ。
関西の棋士は他にも、糸谷八段や稲葉八段など躍進が著しい。
地方差というのは以前はあったらしいが、棋譜データベースやインターネット将棋、将棋ソフトが強くなっている現在では、将棋での地方差はほとんどないと言われている。

第2期叡王戦は佐藤天彦九段が頂点に

第2期叡王戦の決勝戦にて三番勝負を戦い、第一局(12/4 沖縄・万国津梁館)は108手にて後手佐藤九段が勝利。
第二局(12/11 東京都・迎賓館別館)は97手にて先手佐藤九段が勝利。
この結果、第2期叡王戦は佐藤九段が頂点に立ち、第2期叡王となった。
佐藤九段はこの後、2017年春に行われる第2期電王戦にて、将棋ソフトPonanza(第4回将棋電王トーナメント優勝ソフト)と戦う予定。

第1局観戦記(深浦康市)

挑戦する者たち 佐藤天彦九段―千田翔太五段:第2期 叡王戦 決勝三番勝負 第1局 観戦記

第2局観戦記(阿部光瑠)

一手で伝える力 佐藤天彦九段―千田翔太五段:第2期 叡王戦 決勝三番勝負 第2局 観戦記

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