【将棋】スマホ不正疑惑から谷川会長辞任まで 調査委報告書で読み解く一連の経緯まとめ

調査委の会見と三浦弘行九段の会見後も、連盟は常務会(執行部)による中継会見はなく読み上げ会見のみで、処分も執行部の減給に留まって批判が高まっていた中、将棋連盟会長の谷川浩司会長が辞任するとの報道がされました。
調査委報告書公開と第29期竜王位就位式を一つの区切りとして考えられていたと思われます。

また、竜王位就位式では挨拶の中でタイトルを防衛した渡辺竜王が三浦九段に対し謝罪の言葉を述べました。
竜王戦の挑戦者と三浦九段の不正疑惑処分を巡る騒動に区切りが付いたと思いますが、今後三浦九段側から金銭的補償や名誉回復措置を求めるのかどうか、後任の会長の選任、人材を外部から連盟に招聘したり、電子機器に対する措置を強化するなどの組織改革が焦点になると見られます。

谷川浩司日本将棋連盟会長
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(画像掲載元:日本将棋連盟公式サイト)

一連の経緯

  • 第29期竜王戦決勝Tにおいて三浦弘行九段と対局した久保利明九段が三浦九段の30分の離席について不信を抱く(2016/7/26)(※実際には30分継続の離席した事実なし)
  • 関西月例報告会にて久保九段からソフト指しの不正の規制を提言(2016/7/26)
    東常務理事、谷川会長には不正の事例が三浦九段との対局であるとの情報が伝えられる
  • 常務会を開催し久保九段から三浦九段の30分の離席について報告される(2016/8/4)
    対局時の電子機器の取扱について定める通知書(電子機器取扱通知)を送ることを決定(※通知書は事実上三浦九段への警告だったとされる)
    常務会で竜王戦挑戦者決定三番勝負で三浦九段の行動を監視することを決定
  • 三浦九段が電子機器取扱通知を受領(2016/8上旬)
  • 第29期竜王戦挑戦者決定三番勝負で三浦九段が丸山忠久九段に勝利し挑戦者となる(2016/8/15,8/26,9/8)
  • 常務会で第29期竜王戦で金属探知機の導入や荷物検査を決定(2016/9/20)
  • 東西合同月例報告会にて電子機器使用に関する内規を12/14から施行を決定(2016/9/26)
  • 名人戦A級順位戦において三浦九段と渡辺竜王が対局し三浦九段が勝利(2016/10/3)
  • 渡辺竜王が千田翔太五段(当時)等との会談において三浦九段の指し手についてソフト(技巧)指し疑惑を持つ(2016/10/4)
  • 渡辺竜王が10月中旬発売の文春で三浦九段のソフト指し疑惑が掲載されるという懸念を持つ(2016/10/3-4頃)
  • 渡辺竜王が島常務理事に連絡し有力棋士による会合を求める(2016/10/7)
  • 島常務理事宅で谷川会長、島常務理事、佐藤康光九段(棋士会会長)、羽生善治九段、佐藤天彦九段、渡辺明九段、千田翔太五段の7名が集まる(2016/10/10)電話で久保九段(棋士会副会長)も会議に参加する
    三浦九段と久保九段との対局での長時間の離席、三浦九段指し手と技巧の一致率の高さ、三枚堂四段からスマホログイン操作が三浦九段に伝わっていること、竜王戦第1局次週に文春の記事掲載があることが説明される
  • 島常務理事より電話で三浦九段に常務会への参加を要請(2016/10/10)
  • 常務会を開催し三浦九段から聞き取り調査(2016/10/11)
  • 三浦九段から調査の間休場扱いにし電子機器の提出をして調べてもらう意向が連盟に伝えられる(2016/10/11)
  • 島常務理事より三浦九段から竜王戦を休場するとの意向を発表(2016/10/11)
  • 執行部が丸山忠久九段へ第29期竜王戦の出場要請(2016/10/11)
  • 島常務理事等より読売新聞社へ挑戦者変更を説明し了承を得る(10/11-12)
  • 将棋連盟より三浦九段に休場届を10月12日までに提出することを求める(2016/10/11-12)
  • 三浦九段代理人から島常務理事に休場届は出さないと連絡(2016/10/12)
  • 執行部が三浦九段を10/12から12/31までの出場停止処分を決定(2016/10/12)
  • 将棋連盟 第29期竜王戦七番勝負挑戦者の変更について(2016/10/12)
    第29期竜王戦七番勝負挑戦者の変更について|将棋ニュース|日本将棋連盟
  • 第29期竜王戦前夜祭での対局者あいさつ(2016/10/14)
  • 将棋連盟より三浦九段に対して、処分についての通知書を発送、メール送信(2016/10/14)
  • 執行部が協議に不参加だった常務会の残りのメンバーに対して追認を得る(2016/10/14)
  • 渡辺竜王、挑戦者丸山九段で竜王戦開催(2016/10/15-12/22)
  • 10月20日発売文春に渡辺竜王のインタビューが掲載(2016/10/20)
    将棋「スマホ不正」問題を渡辺明竜王が独占告白 | スクープ速報 – 週刊文春WEB
  • 理事会にて第三者調査委員会による調査を決定(2016/10/24)
  • 将棋連盟 第三者調査委員会設置のお知らせ(2016/10/27)
    第三者調査委員会設置のお知らせ|将棋ニュース|日本将棋連盟
  • 月例報告会で渡辺竜王から棋士に一連の経緯の説明(2016/10/31)
  • 渡辺竜王ブログ更新(2016/11/1)
    一連のこと。 – 渡辺明ブログ
  • 渡辺竜王ブログ更新(2016/11/2)
    最後に。 – 渡辺明ブログ
  • 電子機器使用に関する内規施行(2016/12/14)
  • 第三者調査委員会記者会見(2016/12/26)
    日本将棋連盟第三者調査委員会記者会見 – 2016/12/26 15:00開始 – ニコニコ生放送
  • 三浦九段記者会見(2016/12/27)
    《将棋ソフト使用疑惑は不正なし》三浦弘行九段 記者会見 生中継 – 2016/12/27 15:30開始 – ニコニコ生放送
  • 将棋連盟読み上げ会見(2016/12/27)
    将棋連盟 記者会見内容の読み上げ放送(第三者調査委員会の調査結果について) – 2016/12/27 18:00開始 – ニコニコ生放送
  • 将棋連盟 第三者委員会調査結果を受けて(2016/12/27)
    第三者委員会調査結果を受けて|将棋ニュース|日本将棋連盟
  • 将棋連盟 第三者調査委員会からの結果報告書の開示(2017/1/16)
    第三者調査委員会からの結果報告書の開示|将棋ニュース|日本将棋連盟
  • 竜王位就位式にて渡辺竜王謝罪(2017/1/17)
  • 谷川会長辞任報道(2017/1/18)
    (※本来1/19の常務理事会決議を持って会長辞任決議後発表という段取りになっていたが、報道が先に出たため急遽記者会見を先に開くことになったとのこと。)
  • 谷川会長辞任発表(2017/1/18)
    日本将棋連盟 谷川浩司会長 辞任記者会見 – 2017/01/18 15:00開始 – ニコニコ生放送
    会長の辞任に関するお知らせ|将棋ニュース|日本将棋連盟
  • 理事会にて谷川会長辞任、島常務理事辞任を決議(2017/1/19)
  • 理事会にて会長後任の選任のため、臨時総会招集を決議(2017/1/19)
  • 谷川俊昭氏(谷川前会長実兄)が三浦九段の名誉回復のため署名運動を開始(2017/1/30)
    三浦弘行九段の真の名誉回復を実現
  • 谷川会長体調不良のため入院(2017/2/2)
  • 臨時総会にて新理事、新会長を選任(谷川浩司前会長、島朗常務理事の辞任に伴うもの)(2017/2/6)
    新理事:佐藤康光九段、井上慶太九段
    新会長:佐藤康光九段
    日本将棋連盟新役員のお知らせ
    日本将棋連盟 新会長就任記者会見 生中継
    合わせて、総会前に28人の棋士から、谷川、島両氏を除く5名の常勤理事についても解任請求があり、将棋連盟定款14条2項により、臨時総会の開催を決議(開催日 2017/2/27)
  • 渡辺竜王ブログ更新し改めて一連の事を謝罪(2017/2/8)
    臨時総会など。 – 渡辺明ブログ
  • 三浦九段復帰戦(第30期竜王戦 1組ランキング戦 羽生善治三冠 結果:羽生三冠の勝利)(2017/2/13)
  • 2月27日、臨時棋士総会を開催。5理事への解任決議の投票が行われた。(2017/2/27)
    【投票結果】
    青野照市専務理事、中川大輔常務理事、片上大輔常務理事の3理事が解任。
    東和男八段、佐藤秀司七段は留任。
    日本将棋連盟理事解任のお知らせ
    また、佐藤康光連盟会長就任に伴い空席となっていた棋士会会長に中村修九段が就任。
    日本将棋連盟棋士会長に中村修九段が就任
  • 4月10日、任期満了に伴う日本将棋連盟の役員(理事)予備選挙が告示され、以下の立候補者が届出を行った。(2017/4/10)
    永世名人の資格を持つ森内俊之九段はフリークラス転出後の理事立候補で注目された。
    また、清水六段は女流として初の常勤理事立候補となった。

    【関東理事立候補者=7名(うち定員5名)】※名前は届出順
    森内俊之九段、森下卓九段、清水市代女流六段、田中寅彦九段、鈴木大介九段、瀬川晶司五段、佐藤康光九段(現会長)

    【関西理事立候補者=3名(うち定員2名)】※名前は届出順
    小林健二九段、脇謙二八段、井上慶太九段(現常務理事)

  • 4月27日、予備選挙の投票の結果、以下の当選者となった。(2017/4/27)

    【関東理事当選者】※名前は届出順
    森内俊之九段、森下卓九段、清水市代女流六段、鈴木大介九段、佐藤康光九段(現会長)

    【関西理事当選者】※名前は届出順
    脇謙二八段、井上慶太九段(現常務理事)

    今後の動きとしては、5月29日に通常総会で正式に承認され、就任が決まる。
    会長については理事の互選により決まるが、佐藤康光現会長が留任する見込み。

  • 将棋連盟佐藤会長と三浦九段による合同記者会見(2017/05/24)
    日本将棋連盟・三浦弘行九段 記者会見
    三浦弘行九段と日本将棋連盟の間で和解成立のご報告
    2017年5月23日に将棋連盟と三浦九段の間で和解の合意が成立したとして記者会見が行われた。和解金額等は非公開。
    今回の会見に先立ち、将棋会館内で渡辺明竜王から三浦九段に謝罪がしたいとして事前の連絡はなかったが申し出があり、会見前に渡辺竜王から三浦九段への謝罪が行われたと三浦九段本人から説明された。
    また、連盟として三浦九段の名誉回復に努めていくこと、今後は対局の透明性をより高めていくことが佐藤会長から報告され、現在三浦九段の希望で三浦九段の対局時のみ行われている金属探知機等による事前検査を、今後全棋戦対局で適用するのかといったことも、内部委員会を発足して決めること等も報告された。

以下、長くなりますので、経緯についてはこのエントリーではここまでにさせて頂きます。

第三者調査委報告書公開

第三者調査委員会からの結果報告書の開示|将棋ニュース|日本将棋連盟

自分も見ましたが、かなり長い内容で難解です。
(追記:ねとらぼによると、こちらの結果報告書は差し替え版であり、最初に登録された版(ドラフト版)とは微妙に内容が異なっているそうです。
将棋棋士のスマホ不正疑惑、第三者委報告書のドラフト版が存在 – ねとらぼ

三浦九段への疑義は8月の三番勝負の行動監視など水面下ではあったものの、竜王戦への日にちがない中で文春の報道が間近に迫ることでパニックとなった執行部がタイトル戦の開催を優先した『文春パニック』だったのではという印象です。
経緯にある通り聞き取り調査から竜王戦開催まで10月は短期間に大きな出来事が集中しており、執行部も正常な判断が出来なかったのかもしれません。

一方で三浦九段側にも脇の甘い部分があったことは否めず、8月に連盟からの電子機器取扱通知で離席や外出に対しても事実上の警告があったにも関わらず8月以降も再三の離席を繰り返したことで棋士間の疑惑を生みやすい状況であったこと、電子機器使用疑惑をかけられている数人であったという自覚があったにも関わらず特に説明や対応をしなかったこと、連盟から呼び出されたときにも守衛室で休んでいたとして不可解な説明をして余計に疑惑を深める印象を与えてしまったことなど。(通常棋士は将棋会館4階の桂の間で休憩を取ることになっている。)

棋士によっても見方が変わるソフトと手の『一致率』や感想戦の内容により情報が錯綜して現場が混乱してしまったこと、三枚堂四段から三浦九段がPC遠隔操作の方法を聞いていたこともタイミングが悪く悪印象を与えることになりました。
決定的なのは渡辺竜王が文春にソフト指しをスクープされて竜王戦直前に文春の情報が出るとスポンサーに致命的な影響が出ることを懸念を表明したことです。

結局、これらが複合的且つ短期間に重なり、10月15日から始まる竜王戦開催までに日にちがない状況で、スポンサーとタイトル戦を最優先するという基本方針から、物的証拠に乏しくとも影響が甚大であれば三浦九段処分やむなしという結論になったという風に見えました。

将棋連盟とスポンサー、各新聞社にはファンや視聴者に寄り添った現代的な運営が求められている

ただ、色々な意見が言われていますが、タイトル戦スポンサーの読売新聞社に掛け合って、「こういう事情が出来たので先ずは調査してその結果で判断させてもらえないか」という交渉が出来なかったのかという点が疑問に浮かびます。
調査委の資料ではそういう動きが全く書かれていないので恐らくなかったのでしょう。
読売新聞社にタイトル戦延期を依頼して、調査を開始して、第29期竜王戦を三浦九段と渡辺竜王が指すという進行で問題はなかったです。万が一にも三浦九段がクロであればその時は挑戦者を交代すれば良かったのです。

これは予想ですがもし昨年の第2期叡王戦で同じことが起きたとしても、ここまでパニック的な状況になっていたかどうか。
ドワンゴや川上会長からは叡王戦決勝延期して判断しましょうという快諾をもらえたと思いますし、或いはドワンゴ側からそうすることを提案されたかもしれません。
そういう意味でスポンサーの各新聞社と将棋連盟との関係も時代に即したものでないのではないかと心配になります。

将棋連盟、そしてスポンサーの各新聞社は、スポンサーの意向やタイトル戦の開催よりも何より重要なことは、将棋がファンや視聴者に寄り添ったものであることを、ぜひこの機に感じて欲しいと思います。

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