【書評】【読書レビュー】ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者「Amazonとライバル社の攻防が克明に描かれた資料的価値の高い本」

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自分はAmazon初期から使い続けているヘビーユーザーであり、年間10数万から時には数10万もの買い物をしている。
食料や消耗品はパントリーで大量注文し、ゲーム機やオーディオ製品なども当然のようにAmazonで購入する。
プライムユーザーであり、キンドルは発売当初のモデルを買ったが、電子書籍はまだ100冊と少ししか買っていないがこれでも少ないと思っている。(本当はもっと買いたいが電子書籍化される点数が少ないため中々増えない。)

これほど使っているサービスだが、思ったよりAmazonのことを知らないので、この本は以前から読むべき本としてウィッシュリストに載っていたが、「AmazonKindle本春のフェア」の値引きによりようやく買う決心が付いたので、購入した。
読了したので読書レビューを上げる。

ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者
日経BP社 (2014-01-09)
売り上げランキング: 1,127

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内容について

内容はAmazon創業者で現CEOベゾスの伝記というよりAmazonがいかにアメリカでの書籍販売からのし上がり、ITトップ企業やオンライン企業、オフライン企業、全米書籍協会や大小さまざまな企業と丁々発止のやり取りを繰り広げ、すかしたり脅しをチラつかせ買収したりといったAmazonの膨大な歴史そのものが描かれている。

Amazonが原始的な企業から最先端のIT企業へと規模も形態も変質、拡大を遂げていく過程で、それを支えた多くの優秀な人材がベゾスに罵られた挙句使い捨てにされていくことも簡潔だが語られる。
Amazonの企業体質は昨今の日本で言う「ブラック企業」そのもので、長時間労働を厭わずAmazonのビジョン実現のため猛烈に働き続けなければならず、CEOが次々に命じる無理難題を解決し続けなければ社内で生き残れず、成果が一番低い社員は容赦なく解雇され過酷な職場に関わらず福利厚生は一般企業とほとんど変わらず、直ぐに退社されることを見越してストックオプションは数年勤務しなければ得られない。
対立し相手をやり込める態度を是とする極めて好戦的な社風。
こうした勤務環境に耐えられず半年や数ヶ月で会社を離れることはAmazonでは珍しくなく、退職後にPTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した社員もいる。

ベゾスが子供の頃から異才を発揮していた話や宇宙開発に乗り出した理由、ベゾスがジョブズと同じく養子だった過去などにも触れられるが、話の多くはAmazonと他社の攻防自体に割かれている。
Amazonはその既存の枠に留まらない企業内容で、規制の枠組みや既得権益、対立企業を正面から打ち破ってきて、或いは法律の抜け道を掻い潜って大きくなってきたため、そうした過程で対立してきた企業や組織とはかなりの軋轢を抱えている。
Amazonの歴史とは文字通り他社との攻防の歴史そのものだ。
日本ではAmazonというと主に配送業者への荷物の圧迫で取り上げられることが多いが、Amazonの掲げるミッションが遠いアジアの日本にまでそうした形で押し寄せ、影響を与えているのは何故か、この本を読むと良く分かる。
或いは、Amazon Dash Buttonやドローン配送の実証実験、レジフリーのコンビニ店舗「アマゾン・ゴー」など一見突拍子もない、或いは実現が疑問視されるようなアイデアや商品についても、この本を読んだ後であれば、ベゾスからすればこれでも「遅すぎる着手」ということになるのが分かる。

全体的に言い回しが捻ってあり、かなり読み辛いが、それでも資料的価値は高いと思われる。
ビジネスウィーク社のライターである著者のブラッド・ストーンはベゾスに直接会って内容の確認を取っているが、本書はAmazon礼賛の内容にはなっていない。
むしろその逆で、内外にかなり手酷い強圧的な交渉をしてきた来歴が淡々と綴られる。
以前、Amazonが日本の小売市場を席巻しつつあることを、米国のペリー艦隊が横須賀に押し寄せたことに準え、「黒船」と呼ばれたことがあったが、この本を読めば黒船どころではない、エイリアンの超巨大規模のマザーシップの船団が日本全土を制圧したのだということがよく分かるだろう。

出てくる人物は大量におり、『スティーブ・ジョブズ』同様に読むのが大変な本。
筆者は3日に分け読了まで合計10時間かかった。内容は自分は面白いと感じたが、誰にでもお勧め出来る本ではないとも感じた。
恐らく多くの人は冗長な内容と読むのが面倒な言い回しや細かい描写、名前だけ出てきて直ぐに消える多数の登場人物にうんざりして読むのを止めてしまうと思えるからだ。

Amazonに関する面白いエピソードもあり、Amazonの在庫を保管する倉庫の壁を掘って洞窟を作り、そこで在庫からちょろまかした食料や雑誌等で生活していたアルバイトの話しなどは思わず笑ってしまった。
また、AmazonがただのIT企業と異なるのが、在庫と物流が絡んでいる所で、そこをいかに苦心しつつ解決していくかも興味深い。

自分はAmazonのヘビーユーザーだが、AmazonのWEBのUI(インタフェース)や作りも初期は原始的で今のようにパーソナライズもされていなかったし、当然品物も少なく動画や音楽もなかった。それが改良に次ぐ改良で今ではAmazonプライムラジオでキュレーションされたカフェミュージックを聞きながらキンドル電子書籍を見られるし、好きなドラマもわざわざビデオレンタルせずともAmazonプライムビデオで直ぐに見られる。

自分にとってはこれ以上ないほど使いやすいサイト、WEBサービスになっているAmazonが、ここに来るまでどのような道標を辿り、他社と戦い、或いは潰し併合してきたか、その過程でどれほどの人物が疲れきってAmazonを去っていったか、ベゾスがどのような考えでこれほどのサービスを提供する企業を作れたのか、それを思うと感慨深いものがあった。

興味深いトピック

  • Amazon勃興からIT企業への転進まで
  • Amazonの倉庫がどのようにして完全自動化されたフルフィルメントセンター(Fulfillment Center/FC)になったか
  • Amazonプライムの誕生の経緯
  • マーケットプレイス誕生の経緯
  • なか見!検索の誕生の経緯
  • レコメンデーション機能の導入の経緯
  • 電子書籍市場への参入の経緯
  • キンドルの開発から発売まで
  • バーンズ・アンド・ノーブル、ウォルマート、アップルなどの競合企業や巨大企業との戦い
  • アメリカ国内から見てAmazonという企業がどのように見られているか
  • ベゾスの愛読書の12冊

読書に向いている人

  • 90年代早期からのアメリカIT企業の歴史に興味がある人。
  • ユーザーとしてAmazonをよく利用していて社内の体制や意思決定制度、歴史に興味がある人。

読書に向いていない人

  • 軽い読み物で数時間の時間を過ごしたい人。
  • 経営者向け、アントレプレナー向けの内容を求めている人。(『How Google Works』のように経営者向け、アントレプレナー向けに書かれた本ではない。)
  • 人物中心の伝記が読みたい人。(『スティーブ・ジョブズ』のように人物を中心に描いた本ではなく、飽くまでも主役はAmazonという企業の話になっている。)
  • Amazonが嫌いな人。
  • 日本の出版業界との対立や配送業界との関係について知りたい人。(Amazon(アマゾンジャパン)の日本での活動はほとんど記されていない。)
  • ドローン配送計画等、2016-2017年時点のAmazonの最新のプロダクト状況について知りたい人。(本書は2014年1月の印刷刊行版のデータを元に電子書籍化されているため、2014年以降のトピックについては扱われていない。)

合わせて読みたい

Amazonを物流・ロジスティクスから追ったこの本もあったので紹介しておく。自分も機会があれば読んでみたい。

アマゾンと物流大戦争 (NHK出版新書)
NHK出版 (2016-09-12)
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